YouTubeに溜めたギターの曲、結局どれが弾けるのか分からなくなる話
「弾きたい曲」の再生リストが50本を超えたあたりで、リストは役に立たなくなります。練習しようと開いても、どれを実際に試したのか、どれを途中までやったのか、どれを8か月前に保存したきり一度も開いていないのか、思い出せません。リスト自身もそれを知りません。動画を追加した順番は覚えていますが、弾けるかどうかを入れる欄はありません。
本題に入る前に断っておきます。読み方が変わるからです。私はギター練習アプリを作っているので、あなたに特定のやり方で曲を整理してほしいという利害があります。この後に書く3つの状態の分け方は、研究の裏づけがあるものではありません。私が作ったアプリのデータ構造そのものです。それが役に立つと思うから書いているのであって、研究が導いた結論ではありません。
再生リストは「弾けるかどうか」を覚えていない
YouTubeも何かは覚えています。視聴履歴がオンになっていれば、サムネイルの下にどこまで見たかを示す小さいバーが出ます(YouTube ヘルプ)。ただし「これは弾ける」「これは諦めた」「これは3か月触っていない」を入れる欄はありません。あのバーが表しているのは動画をどれだけ見たかであって、曲をどれだけ弾けるかではありません。8か月前に1回通しで見ただけの動画も、今日ちゃんと弾ける曲も、バーは同じように満タンで表示されます。
動画が10本くらいならこれで困りません。30本、40本を超えると成り立たなくなります。リストが同時に2つの役目——「弾きたいものの候補」と「進捗の記録」——を担わされているのに、後者のために作られたものではないからです。
「弾けるか」に答えられないのは、そもそも定義していないから
曲を「弾けるかどうか」で仕分ける前に、その日の気分で結果が変わらない「弾ける」の定義が必要です。定義がないと、答えはその日の調子から出てきます。うまく通った日は「弾ける」に入り、同じ曲を20分後にもう一度弾いて詰まれば「まだ」に入ります。弾くたびに結果が変わる、あてにならない物差しです。
私が使っている定義はこうです。本来のテンポに近い速さで、コード表を見ずに、最後まで止まらずに、2回続けて弾ける。 「2回」は些細に見えて、実は肝心な部分です。1回きれいに弾けたのは運のこともありますが、2回目でそれが本物かどうかが分かります。
どの定義を選ぶにしても、目につくところに書き出してください。そして、調子が悪かった日があっても、その基準を変えないことです。
3つの状態に分ける
「弾ける」の意味が決まると、保存した曲はすべて次の3つのどれかに入ります。
- 弾きたい — 見つけて、イントロやリフくらいは覚えたけれど、本気でやるかは決めていない
- 練習中 — 実際に取り組んでいる。弾ける部分とまだの部分がある
- 弾ける — 上で決めた定義を満たしている
3つの状態を嘘つきにしないために
月に1回、保存した曲を「最後に練習した日」で古い順に並べ替えてください。これで状態が実態からズレていくのを防げます。「弾ける」なのに2か月以上触っていない曲は、一度通して弾いてみてください。基準を満たさなければ「練習中」に戻します。「練習中」のまま3か月動いていない曲は「弾きたい」に落とします。
これは失敗の記録ではありません。リストを開く価値を保つための、ただのメンテナンスです。
曲は「弾ける/弾けない」の1つの箱ではない
上の3分類があっても、「練習中」に何か月も居座って、進んでいる気がしない曲は出てきます。「弾ける」は0か100かの基準ですが、たいてい曲全体が弾けないわけではありません。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビまで弾けていて、ギターソロだけが崩れるなら、曲全体を「まだ」に入れると、実はどこまで来ているかが隠れてしまいますし、次に何を練習すればいいかも分からなくなります。
曲をイントロ・Aメロ・Bメロ・サビ・間奏・ギターソロといった、その曲が実際に持っているまとまりに割って、それぞれが単体で「弾ける」の基準を満たしたら印を付けてください。「練習中」は漠然とした感覚ではなく、分数になります。9つのうち7つ終わって、残り2つ。その2つが、今夜ギターを持ったときに何をやればいいかをそのまま教えてくれます。曲の頭から弾き始めて、また同じ小節で止まる、ということがなくなります。
「弾けるかどうか」の自己判定はズレる
定義をはっきりさせても、弾いている最中の自分の判定はあてになりません。手元を見て、次のコードを聞いて、この先のフレーズのことも考えていて、演奏そのものがどう聞こえているかを判定する余裕はあまり残っていません。
対策は単純です。1曲通しでスマホに録音して、ギターを持たない状態で聴き返してください。聞こえてくるものは、弾いていたときの記憶とたいてい違います。不安だった箇所は意外と大丈夫で、逆に自信があった箇所でテンポが実は動いていたりします。曲を「弾ける」に上げる前に、これをやってください。「2回続けて」のような基準なら特に。録音は、弾いた瞬間の感覚を思い出すよりずっと判定しやすいものです。
ここまでの話は、アプリなしでも無料で成立する
ここまで書いたことは、どれもアプリを必要としません。表計算ソフトか、スマホに最初から入っているメモアプリを開いて、「曲名」「状態」「最後に練習した日」の3列を作ってください。状態には上の3つのどれかを手で入力します。練習が終わったら、その日触った曲の行を更新するだけです。
これで仕組みとしては完成です。状態の列で並べ替えたりフィルタしたりすれば、専用の道具がやってくれることの大半を自分で再現できます。50本並んでどれも同じに見える再生リストと違って、「いま実際に進めているもの」だけの短いリストが手に入ります。パートごとの内訳も欲しければ、シートをもう1枚足すか、曲の行の下にどのパートが終わったかをメモしてください。練習時間を勝手に記録してくれる道具に比べれば更新は手間ですが、お金はかかりませんし、これで成り立ちます。
表計算すら面倒なら、YouTubeの中だけでもっと粗い版が作れます。再生リストを3つ作って「弾ける」「練習中」「弾きたい」と名前を付け、動画をそこに振り分けるだけです。「最後に練習した日」までは分かりませんし、パートごとの内訳も出ませんが、練習前に開くのは「練習中」の再生リストだけで済みます。
Fret Days を試してみる
Fret Days は、上に書いた3つの状態と、曲ごとのパート管理をそのまま形にしたアプリです。パートは曲を追加した時点で最初から用意されていて、その曲に合わせて名前を変えられます。無料プランは3つの状態の合計で20曲までです。
分け方より先に「今週何をやるか」を決めたい方には、同時に何曲まで練習していいかと、速いフレーズで止まるなら遅く再生する話を書いています。どちらもこの記事でいう「練習中」の中身の話です。そもそも取り組む時間が取れないことが本当の問題なら、1日どれくらい練習すればいいかのほうが先に読む記事として合っています。
練習を記録して整理する道具です。→ Fret Days を見てみる
この記事について:ギター練習記録アプリ「Fret Days」の開発者が書いています。この記事は研究を引用していません。自分が曲を整理してきた経験から書いたもので、研究に基づくものではなく、推測を書いている箇所はそう明記しています。
公開日: 2026-08-07