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練習のコツ

ギター初心者は何曲覚えるべき?研究で分かっていることと、実際の決め方

FDFret Days 編集部2026年8月4日約9分で読めます

この質問をすると、すぐに数字が返ってきます。5曲。10曲。「人前で最後まで通せる曲を3つ」。数字はいつも自信たっぷりで、出典はついていません。「初心者が5曲覚えた場合と15曲覚えた場合を比べた研究」を探しましたが、見つかりませんでした。

なので出典つきの数字は出せません。代わりに、実際に測られていること(お互いに食い違っている部分も含めて)を示したうえで、私ならこうする、という話を意見として書きます。

先に2つ断っておきます。読み方が変わるからです。私はギター練習アプリを作っているので、あなたに特定のやり方で練習を整理してほしいという利害があります。そしてこの後に出す3つの分類は、研究から導いたものではありません。私が作ったアプリのデータ構造そのものです。役に立つと思って勧めますが、研究が生んだ形ではありません。

いちばん役に立つ発見練習量は「残る量」を予測しない

ここでいちばん関係が深い研究は、実はレパートリーの数の話ではありません。Duke・Simmons・Cash の3氏は、大学院生と上級学部生のピアノ専攻17名に、ショスタコーヴィチの協奏曲から3小節を練習させ、その1回の練習セッションを録画し、翌日にどれだけ残っているかをテストしました(Duke, Simmons & Cash, 2009, Journal of Research in Music Education)。

分かれたのは量ではなく質でした。練習時間も反復回数も、翌日の成績とは有意な関係を示しませんでした。有意だったのはミスに関する指標——練習中どれだけ正しく弾けていたか——のほうです。それとは別に、著者らは成績上位者が何をしていたかを記述しています。ミスにすぐ気づき、原因を突き止め、通し直すのではなくその箇所だけを練習していた、と。こちらは統計的に検証された予測因子ではなく著者の観察なので、手がかりとして読んでください。

この研究はよく引用されすぎるので、2つ断っておきます。対象は初心者ではなく上級のピアノ奏者で、レパートリーではなく3小節です。そして17人という人数では、有意でなかったことは「効果がない証拠」ではなく「弱い証拠」でしかありません。「この研究では時間と回数が保持を予測しなかった」は「時間と回数は関係ない」とは別の主張です。この1つの相関研究で保持を予測したのは、量ではなくミスの扱いのほうだった——それは「どれだけきれいに練習するか」に注意を向ける理由にはなりますが、量が無関係だと示したわけではありません。

1曲ずつか、何曲か並行か証拠は両方を向いている

こちらは研究がある問いです。そして研究同士が食い違っています。

学習研究全般では、交互練習(1つを仕上げるまでやるのではなく、複数を行き来する)が有利とされています。2024年の運動学習のメタ分析(複数の研究をまとめて分析したもの)では、順序を混ぜたほうが長期の保持が良くなる、という結果が出ています(Scientific Reports, 2024)。ただしこの結果は争われていて、別の研究者たちが査読前の反論を出しています(査読を経ていない原稿で、しかもこのメタ分析に自分たちの研究を批判された当事者によるものです)。統計がその強い結論を支えていない、という主張です。元の著者側も応答しており、議論は査読論文にまで続いています。決着した結果ではなく、進行中の論争の一部として読んでください。

そして音楽で試したら逆になりました。Mathias と Goldman は、上級のバイオリン奏者20名(解析は19名)に3つの練習スケジュール——1つずつ集中/徐々に混ぜる/完全にランダム——で練習させ、24時間後にテストしました(Mathias & Goldman, 2025, Journal of Research in Music Education)。練習直後には差がありませんでした。24時間後のテストでは、1つずつ集中して練習したグループがいちばん残っていました

逆側の研究は、私自身が別の記事で引用しています。ギター練習が続かない7つの理由で、複数の課題を行き来したほうが翌日の成績がやや良かった研究を挙げました。クラリネット奏者10名、同じ24時間後のテストです。ただしその効果は著者自身が「わずか」と書いていて、録音を評価した3人の審査員のうち1人でしか統計的な有意差が出ていません。つまりこの記事には24時間後を見た音楽の研究が2つあり、逆を向いています。バイオリンのほうが規模が大きく、2条件ではなく3条件を比べているので私はそちらをやや重く見ますが、「やや」がこの選好の正直な強さです。だから「常に3曲並行しろ」は、練習の組み立ての土台にするには弱すぎます——間違っているからではなく、そこまで断言できるほど確かめられていないからです。

分散練習(間隔をあけて練習する)も似た状況です。学習研究全般では最もよく確かめられた効果のひとつですが、Wiseheart・D'Souza・Chae の3氏がピアノ初学者(約半数は過去に何らかの楽器の経験あり)を対象に、0分・1分・5分・10分・15分の間隔で比べたところ、効果は見られませんでした(2017, PLOS ONE)。ただしこの研究のテストは最後の練習から5分後なので、「月曜にまとめてやる」と「月曜と木曜に分ける」の比較については何も言っていません。

実務的には、2〜3曲やっているなら行き来して構いません。ただしそれを制度にはしないでください。ギターで成り立つと示した人はまだいません。

私が使っている分け方(研究ではなく、アプリのデータ構造です)

上で断ったとおり、これは私のアプリが曲を管理している形そのものです。中途半端な曲がたまるのを止められたのがこれだった、というだけで、裏づけの研究はありません。

状態 意味 何曲まで
弾ける 本来のテンポに近い速さで、コード表を見ずに、最後まで止まらずに、2回続けて弾ける たまった分だけ
練習中 いま取り組んでいる。弾ける部分とまだの部分がある 1〜3
弾きたい イントロやリフだけ覚えて、本気でやるか迷っている段階 何曲でも(無料プランの20曲は3つの状態の合計です)

いちばん上の行は厳しく判定してください。「止まらずに通せる」は、7割の速度でコード表を見ながらでも成立します。それを数に入れ始めると、上の行は意味のない数字に膨らみます。

「1〜3」について正直に書くと、上に挙げた2つの研究のうち、私がやや重く見ているほうは「3」ではなく「1」を支持しています。私が3にしているのは飽きるからで、いくつか並行していれば常に手に取るものがあるからです。これは好みであって結果ではありません。私ではなく証拠に従いたいなら、1曲にしてください。

表が隠していることも書いておきます(これは観察であってデータではありません)。初心者の場合、真ん中の行を埋めるのはたいてい曲ではありません。バレーコード、コードチェンジ、ピッキングです。これらは曲と同じだけ集中力を食うので、曲3つ+技術2つは実質5つが並行している状態です。一緒に数えないと、この制約は何もしません。

私が主張として守りたいのは、制約をかけるべきは合計ではなく真ん中の行だという点だけです。「練習中」が長いリストになっているときは、たいてい取り組んでいるのではなく避けている——というのは私の推測で、自分に起きたときは毎回そうだった、というだけです。これが一般に当てはまるかのデータはありません。

いちばん下の行は、思われているより大事です。イントロだけ覚えて放り出すのは無駄ではありません。真ん中の行が要求する数週間を払う価値があるかを確かめる作業です。失敗ではなく試食だと思ってください。(1か所が速すぎて止まっているだけなら、それは覚悟の問題ではなく速度を落とす練習の問題です。)

仕上げることの意味と、それに反する証拠

「曲を最後まで仕上げることが、続けられるかどうかに影響するか」を調べた研究を探しましたが、見つかりませんでした。動機づけや脱落についての音楽の研究はたくさんありますが、「仕上げること」だけを取り出して調べたものは見つけられませんでした。なので以下は推論であって、根拠ではありません。

分かっているのは、どれだけの人がやめるかのほうです。Ruth と Müllensiefen は、イギリスとドイツの中等学校で10〜17歳の3,303名を対象に、毎年学校を訪問して調査しました(ただし大半の参加者は1回しか参加していないので、同じ個人を追跡したというより、年齢ごとのスナップショットに近い調査です)(Ruth & Müllensiefen, 2021, PLOS ONE)。一度でも音楽活動をしていた人のうち、17歳までにおよそ半数が音楽活動をすべてやめていました。減り方がいちばん急なのは15〜17歳です。ギターはピアノよりやや脱落率が高い結果でした。

ここが私にとって都合の悪いところです。著者らはギターの脱落率が高い理由として、ひとつの仮説を挙げています——ギターは基礎的なレベルに到達しやすい楽器なので、「もう目標に届いた」と早い段階で感じやすいのではないか。もしそうなら、どこかに到達すること自体がやめる理由になります。「曲を仕上げれば続けられる」とはほぼ逆です。

私にはこれを解決する方法がありませんし、上の分け方がこれに答えているとも言いません。「弾きたい」の行を切らさないことが「もう終わった」と感じるのを防ぐのかもしれません。あるいは研究者が正しくて、仕上げることが本当に離脱を早めるのかもしれません。誰も検証していません。

ひとつだけ、自分で確かめられることがあります。空白期間を生き延びるのは、仕上げた曲だけです。 3週間やめてみると、中途半端に覚えた曲はほぼ消えています。つかまるところがないからです。仕上げた曲は一晩で戻ってきます。これは研究ではなく私の経験ですが、この記事の中で唯一、誰の助けもなく3週間で検証できる主張です。

なおこの調査は学校に通う10代が対象で、YouTubeで独学している大人ではありません。50%を自分の確率として読まないでください。やめるのが普通で、続くほうが例外——そう読んでください。

今週やること

  1. いま触っているものを全部書き出す。 願望ではなく、今週実際に触ったものだけ。
  2. 弾ける/練習中/弾きたい に分ける。 いちばん上は厳しく。止まらずに通せないなら、まだ「練習中」です。
  3. 今週のメインを1曲決める。 いちばん上手そうな曲ではなく、いちばん完成に近い曲を。もう1〜2曲を並行させるのは好みであって証拠ではありません。残りは「弾きたい」に落として、メインが終わるまで待たせます。
  4. いちばん下の行が空でないか確認する。 空なら、まだ弾けない曲を探しに行ってください。

これを月に1回やれば、「何曲覚えるべきか」という問いは消えます。答えは「いちばん上の行にたまった数」になります。自分で決めた目標と同じくらい恣意的な数字ですが、実際に弾ける曲でできています。

ひとつ訂正しておきます。ギター練習が続かない7つの理由では、初心者は5曲ではなく1曲に絞れと書きました。今も1曲のほうが安全な既定値だと思っています——2つの研究が食い違っている以上、どちらが正しかったとしても損をしないのが「1」だからです。上の1〜3は、私が実際にやっていることの告白です。

まとめ

何曲覚えるべきかについて、根拠のある数字はありません。存在する研究は、そもそも曲数を測っていません。測られているのは、私が見つけた唯一の直接的な研究では、練習時間と反復回数が保持を予測しなかったこと、そして練習を複数の曲に分けることについての一般的な助言が、音楽で試すと毎回は再現していないことです。「練習中」の行を短く保ち、仕上げ、その後ろに次の候補を置いておく——この3つは全部、私の意見です。そういうものとして扱ってください。

Fret Days は、この分け方が生まれたアプリです。曲ごとに3つの状態を持たせていて、道具を使った時間はそのまま記録に残るので、どの曲が実際に練習されているかを推測ではなく数字で見られます。無料プランは3つの状態の合計で20曲までです。

練習を記録して整理する道具です。→ Fret Days を見てみる

この記事について:ギター練習記録アプリ「Fret Days」の開発者が書いています。引用した研究はすべて元の論文にリンクしており、査読を経ていない原稿の場合はその旨を明記しています。研究の対象が別の楽器・別の習熟度・主張に必要な期間より短い間隔・音楽以外の分野である場合は、本文中にそう書いています。研究の著者が自分のデータを私と違うふうに解釈している場合も、そう書いています。研究が見つからなかった場合——この記事が勧めている整理の仕方も含めて——そう書いています。

公開日: 2026-08-04

FD

Fret Days 編集部

ギター練習記録アプリ「Fret Days」開発チーム

自分たちがギターを続けられなかった経験から、練習を記録する道具を作っています。記事中の数字・研究には、確認できた出典へのリンクを添えています。

読んだら、次は弾いてみませんか

Fret Daysは、練習した時間と詰まった場所を残しておく道具です。

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