
ギターの練習は1日何分?何時間?初心者の目安と15分メニュー
「ギター 練習 何分」で検索してきた方に、先に数字で答えます。
- 始めたばかりの人:15分で十分です
- 曲を通せるようになってきた人:20〜30分
- とにかく時間がない日:5分でも、やらないよりずっといい
そして、長さより大事なことが1つあります。1回の長さより、毎日触るかどうかです。理由はあとで説明します。
ちなみにこの記事は、練習時間を長くする方法ではなく、短い時間でも続けるための考え方の記事です。長時間みっちりやりたい人向けの内容ではありません。
結論初心者は15分、慣れたら20〜30分
ここは研究の裏付けがある数字ではなく、経験則としての目安です。
| 段階 | 目安 | 理由 |
|---|---|---|
| 始めたばかり(1〜2ヶ月) | 15分 | 指と体を慣らす段階。長くやっても伸びしろが小さい |
| 曲を通せるようになった | 20〜30分 | 難所の反復に時間を割けるようになる |
| 1曲を期限つきで仕上げたい | 時間より頻度 | 「今日は何分」より「今日触ったか」が効く |
| 1時間以上取れる日 | 60分を目安に、それ以上は翌日に回す | 長時間ほど効率が落ちやすい |
始めたばかりの時期に15分で十分としているのは、指がまだ長く保たないうえ、集中力自体も長続きしないからです。この段階で30分に伸ばしても、後半の15分は惰性になりがちで、伸びしろは小さいままです。
曲を通せるようになってきたら話が変わります。難所を切り出して繰り返す作業には反復の回数がものを言うので、時間を確保できるほど有利になります。20〜30分あれば、難所の反復に十分な時間を割けます。目安として、この記事の15分メニューに、難所の反復をもう1周分足したくらいの長さです。
「1ヶ月でこの曲を弾けるようになりたい」のような期限があるときも、1日の練習時間を伸ばすより、毎日触っているかどうかのほうが効きます。
毎日10分か週1回60分か
平日は忙しくて、週末にまとめて練習している人は多いと思います。10分を毎日と、60分を週1回。合計時間は同じです。どちらが有利でしょうか。
ここは経験則ではなく、実際の実験があります。
1978年、英国の郵便局で「郵便番号の入力をタイピングで覚えさせたい」という実務上の課題から生まれ、心理学者アラン・バデリーらが行った研究です。タイピング未経験の郵便局員72名(19〜46歳)を4グループに分け、それぞれ次の4パターンのどれかで、平日は毎日、合計60時間のタイピング練習をさせました。
- 1時間 × 1回/日
- 1時間 × 2回/日
- 2時間 × 1回/日
- 2時間 × 2回/日(実質、1日4時間)
結果、キーボード全体を覚えるまでに最も速かったのは「1時間を1回だけ、毎日」のグループ(平均34.9時間)で、最も遅かったのは「2時間を2回、毎日」のグループ(平均49.7時間)でした。同じ合計時間を練習しても、1日に詰め込んだグループのほうが、覚えるまでに15時間近く多くかかった計算になります(出典:Baddeley & Longman, 1978, Ergonomics)。
この実験自体は「毎日10分」と「週1回60分」を直接比べたものではありません。 4つのグループが違えていたのは、1回あたりの長さ(1時間か2時間か)と、1日の回数(1回か2回か)の組み合わせで、1日1時間・1日2時間(1時間×2回)・1日2時間(2時間×1回)・1日4時間(2時間×2回)という、1日あたりの練習量が異なっていました。どのグループも同じ合計60時間の練習を予定しており、日数に換算すると1日1時間のグループは12週間、1日4時間のグループは3週間かけたことになります。結果、キーボードを習得するまでに必要だった練習時間は、1日1時間のグループが平均34.9時間で最も少なく、1日4時間のグループは平均49.7時間で最も多くかかりました。統計的には「1回のセッションの長さ」の効果がはっきり有意だったのに対し、「1日1回か2回か」という頻度の効果はそれより弱いものでした。つまりここで効いていたのは『短く分けたこと』そのものではなく、『1日の練習量を詰め込みすぎなかったこと』です。同じ合計時間でも、1日に詰め込むほど習得の効率が落ち、逆に1日の量を抑えて日をまたいで分散させるほど、習得が速く正確だったという傾向が、タイピングという指を使う運動技能で、経験ゼロの成人を対象に、はっきり確認されています。ギターの運指にも近い性質の技能なので、参考にする価値はあると考えています。
正直に、逆の結果も書いておきます。同じ論点を調べた別の研究(大学生100人が対象、うち94人はピアノ未経験。練習の間隔を0〜15分の範囲で比較)では、5分後の再テストでは間隔をあけても差が出なかったという報告もあります(PLOS ONE, 2017)。運動技能における「分けたほうがいい」効果は、言葉の暗記ほど単純ではなく、いつでも同じだけ効くとは限りません。この2つの研究の対象がどちらも初心者である点は共通していますが、間隔の長さ(郵便局員の研究は日単位、ピアノの研究は分単位)が違うため、単純に矛盾していると判断するのも早計です。
それでも、「週末にまとめて」より「毎日少しずつ」を選ぶ理由は十分にある、というのがここでの結論です。
対策:週1回まとめて60分より、毎日10分。 合計時間が同じなら、分けたほうに分があります。
15分の配分
15分でやることを固定すると、考える手間が減ります。
15分メニュー
- チューニング(1分)
- 指の準備運動(2分)── 1本ずつ指を開閉する、簡単なクロマチック運指など
- コードチェンジの反復(4分)── 例:C↔G を1分間で何回替われるか数える(6弦すべてがきちんと鳴った替え方だけを数える)
- 曲の難しい部分だけ(6分)── 詰まる箇所とその前後1小節だけを繰り返す
- 通しで1回弾く(2分)
指の準備運動とコードチェンジの反復は、その日どんな曲を弾くかに関係なく固定できます。何をやるか考える時間を削るのが目的なので、内容は自分がやりやすい形に決めてしまって構いません。
もっと時間が取れる日は、チューニング以外の各項目を1〜2分ずつ足せば、続かない理由の記事で紹介した「基本の20分メニュー」に近づきます。逆に「15分でもきつい」という日は、次の5分メニューに切り替えてください。
気力がない日の5分
やる気がない日に15分は長く感じます。そんな日のための、さらに短いメニューです。
5分メニュー
- チューニング(1分)
- コードチェンジの反復(2分)
- 曲を1回だけ通す(2分)
内容の完璧さは求めていません。5分でも「今日触った」という事実だけが目的です。同じ理屈で言えば、5分を毎日積み重ねるほうが、週末の60分よりも理にかなっています。
「5分のつもりが、始めたら気分が乗って15分やっていた」ということもよくあります。それはそれで構いません。ただし逆に、5分で切り上げるつもりが延びること自体を目標にはしないでください。5分で終えても、それは失敗ではありません。
練習した時間は、Fret Days が自動で記録します。5分の日も60分の日も、書き残す手間なしで積み上がります。
長時間練習の落とし穴
逆に、時間があるからと長時間やることにも注意が必要です。
- 痛み:特に始めたばかりの時期は、指先が長く保ちません。痛みを我慢して続けると、翌日以降さらに触れなくなります
- フォームの崩れ:疲れてくると、雑な押さえ方のまま弾き続けることになります。疲れた状態での反復は、間違った形を固めるだけです
- 惰性:同じフレーズを何十回も、意識せずに弾いているだけの時間が混ざります。意識のない反復は、練習になっていません。時間だけ長くても、身につく量は15分の集中練習と変わらないことがあります
次のサインが出たら、その日はそこで中止してください。
- 指先や手首の痛みが強くなってきた
- さっきよりミスが増えている
- 今、何を良くしようとして弾いているか、自分で説明できない
- しびれや関節の痛みが出ている(数日休み、治らなければ整形外科を受診してください)
- 指先の皮が破れた(休むのは失敗ではありません)
長くやることは、上達を保証しません。15分を集中してやるほうが、惰性の60分より身につきます。
それでも「今日は60分取れる」という日はあると思います。60分は、先ほどの実験でいちばん成績が良かった「1時間×1回/日」とほぼ同じ長さなので、無理に分割する必要はありません(ただし始めたばかりの時期は指先が保たないので、これは曲を通せる段階からの話です)。むしろ注意すべきは、90分・120分とその日のうちに延ばしていくことです。同じ実験でも、1回のセッションが2時間になると、1時間のときよりはっきり成績が落ちていました。時間が余ったなら、今日を延ばすより明日も触ることに使うほうが、実験の傾向に沿います。
よくある質問
何ヶ月で弾けるようになる?
目安を出すのは難しい質問です。「簡単な曲が通せる」までなら数ヶ月、「好きな曲を自由に弾ける」までは1年以上かかる人も珍しくありません。同じ練習時間でも、コードの数や曲の難易度、指の慣れ方には個人差が大きく出ます。この記事の目安(15分・20〜30分)をもとに、まずは毎日触ることを優先してください。
社会人はどう時間を作る?
まとまった時間を確保しようとすると挫折しやすくなります。ギターをケースにしまわず、座ればすぐ弾ける場所に置いておくだけでも再開のハードルが下がります。具体的な工夫はギター練習が続かない7つの理由の「ギターをケースにしまわない」の章にまとめています。
毎日やらないとダメ?
理想は毎日ですが、空くこと自体は問題ではありません。忙しい時期や体調を崩す時期は誰にでもあります。大事なのは、空いたあとに前回どこまでやっていたか思い出せて、戻ってこられることです。ブランク明けの具体的な手順はこちらの「ブランク明けに戻れるか」の章で紹介しています。
ギターを触れない日にできること
ギターに触れない日でも、コード表を眺めて指の形を頭に入れる、弾きたい曲の演奏動画を聴き込むといったことはできます。指を動かす練習の代わりにはなりませんが、次に触ったときの再開をスムーズにする効果はあります。
まとめ
「1日何分」に唯一の正解はありません。それでも数字だけ持ち帰るなら、こうです。
- 始めたばかりなら15分、慣れてきたら20〜30分
- 時間がなければ5分でいい。ゼロにしないことが大事
- まとまった時間より、毎日の頻度を優先する
もっと根本的に「続かない」ことに悩んでいる場合は、ギター練習が続かない7つの理由にまとめてあります。
Fret Daysは、練習した時間がそのまま記録に残る練習記録アプリです。書き残す手間なしで、今日の5分も60分も積み上がります。「今週は毎日5分でも触れていたか」を振り返るのにも使えます。
練習時間を記録しておく道具です。→ Fret Days を見てみる
この記事について:ギター練習記録アプリ「Fret Days」の開発者が書いています。引用した研究は原文を確認し、対象人数・条件・著者自身が述べる限界を本文に含めています。レベル別の練習時間の目安は、研究の裏付けではなく経験則です。